MENU

伝統工芸のいま 「井上らんたい漆器」の久留米籃胎漆器

竹と漆という日本の伝統的な素材と技術をもちつつ、現代の新しい生活をモダンに彩る籃胎漆器。
以前は、久留米市に何件かあった籃胎漆器を作る工房も、今では井上らんたい漆器さんをあわせ2件のみになってしまいました。

なぜ今回、私が籃胎漆器に注目し、井上らんたい漆器さんに取材をさせていただくことになったのかというと、
近日、大手企業をはじめ様々な企業がSDGsや環境への意識が高まる中で、何か私にもできることはないかと考え「竹」に注目をしていました。

そこで久留米籃胎漆器のことを知り、現代ではどのような使い方をされているのか気になりましたが
籃胎漆器を日常生活で使用しているという最近の情報はほとんど出てきませんでした。

公式のInstagramもないか・・・と思い
また数日後にチェックしていたところ、井上らんたい漆器さんがInstagramを始められたのです。
たまたまInstagramのフォロワー第一号がCOLEのアカウントとなりました。
これは!と何か不思議なご縁を感じ、すぐに井上らんたい漆器さんへご連絡し、取材させていただくことになりました。

目次

籃胎漆器とは?

籃胎漆器の”籃”とは、竹籠を意味しています。
“籃胎漆器”とは竹籠を素地とした漆器という意味です。

1765年、久留米藩主 京都で名高い塗物師 勝月半兵近衛を久留米藩御用塗師として招き、久留米を漆器の特産地としました。
100年以上経った1885年、久留米の 塗師・川崎峰次郎、竹細工師・近藤幸七、美術愛好家・豊福勝治 の3人により始まり、この久留米独特の塗りに対して、籃胎という言葉が作られます。
1943年には籃胎漆器が『国の技術保存工芸品』に認定されました。

井上らんたい漆器の歴史

井上らんたい漆器さんは明治時代より籃胎漆器に携わっています。

1885年 久留米藩 御納戸塗師・川崎峰二郎、竹細工師・近藤幸七、茶人・豊福勝次 共作で籃胎漆器を創製はじめた頃、初代 井上熊吉は塗師の道に入る
1908年 旧久留米藩主・有馬家直営の赤松商店にて、井上熊吉『籃胎漆器部門職長』となる
1926年 三代前の井上熊吉は、昭和天皇の御即位(御大典)に使われた屏風を製作される
1934年 二代目・井上隆人、赤松商店にて塗り師の跡を継ぐ
1946年 赤松商店の職人と共に『井上籃胎漆器』を創立
1986年 三代目 井上正道『井上籃胎漆器』の跡を継ぐ

今年 2020年は、開催のオリンピックの記念品が作られました。

東京2020オリンピック OFFICIAL
籃胎漆器 梅型皿 藍・紅

一品、一品が人の手と昔からの道具だけで作られ、工房では全製作工程を見ることができます。

今回、社長の井上正道さんにご案内いただき、籃胎漆器ができるまでの製作工程をご説明していただきました。

らんたい漆器 原材料

井上らんたい漆器では、11月〜12月に採取された、地元福岡県筑後地方の吟味された真竹のみを使用します。

らんたい漆器 製造工程

1.真竹割り
採取後、節を切って保管された真竹に印をつけ、一定の幅に割ります。

割られた竹は、大きさごとにまとめられ、天井の保管スペースで保管されます。

工房は工程ごとに部屋が分かれています。

2.籃編み
竹の内外の皮をはぎ、中心部より同じ厚みの竹ひごを作ります。
用途に応じた方法により、種々の形に編んでいきます。

枠を作る場合にも、筒状に編んだ1枚から切っていくつかを作ります。

3.地造り
竹籠をいろいろな形に仕上げていく作業。
外側の部分が仕上がり、ここで原型が完成します。

こちらは編んだ1枚から、2つの底を作ることができます。

4.木屎(こくそ)塗り
目の粗い籠のすき間と縁には、木屎(こくそ)を使って仕上げます。

無事、枠と底を組み合わせ乾燥させます。

5.さび埋め(下地)
編み上がった竹籠の目地は錆(さび)を馬の尾毛ブラシですり込むように埋めていきます。
この作業により竹と竹のすき間を完全になくして滑らかな下地に仕上げます。

こちらで使用する尾毛ブラシも工房で作ったものです。

右がさび埋め前、左がさび埋め後。

6.塗り
一寸のすき間もない竹籠に天然漆または油性漆塗料やポリウレタンが何回もの塗られ、強度を持つ漆器になっていきます。

7.研ぎ出し
竹籠の凹凸を幾度も研いでいきます。
どんな色合いと仕上がりにしたいのかによって、塗りや研ぎ出しの方法を変えて漆器表面の模様を出します。

中心部の朱色がわかりますか?
黒色の下に朱色が塗られていたため、削ると色が出てくるのです。
削り具合を調整しながら、一つ一つ柄を作ってゆきます。

籃胎漆器のお手入れ方法

お使いいただく際のご注意
電子レンジ、オーブン等の使用は避けて下さい。

落としたり、物をぶつけたり、荷重をかけたり、無理な力を加えたりすると破損の原因となることがあります。
急激な乾燥や温度変化により、劣化・変色の可能性がございます。
お盆やトレーの上で、陶磁器を直接使用するとすり傷がつく場合がございます。

保管方法
紫外線に長時間当てると色が薄くなりますので、ご注意ください。
重ねて収納するときは、間に布や紙などを挟んでください。

洗い方・拭き方
台所用中性洗剤を使って、柔らかいスポンジで洗ってください。
研磨剤入りの洗剤は傷になりやすいので避けてください。

つけ置き洗いにつきましては、ひび割れや剥げなどの傷が生じてしまうと、そこから水が染み込んで劣化しますので、長時間水につけておかない方が良いです。
洗い終わったら、自然に乾かすよりも柔らかい布巾で拭く方が長持ちします。
籃胎漆器表面と布の間にゴミや埃があると、拭き傷がつく可能性がございます。

修理
修理や塗り直しは井上らんたい漆器さんにてご対応いただくことができます。

一部引用

現在、工房で製作されている方々は最年少で60代。
機械を使わず全ての工程を手作業で作られている久留米籃胎漆器、
250年近く前に作りはじめられた工芸品を令和の時代、どのように日常生活で楽しむことができるのでしょうか。

COLE公式ライターによる、井上らんたい漆器さんの久留米籃胎漆器を使ったレシピは「こちら」からご覧いただけます。

店舗

井上籃胎漆器株式会社
〒830-0045 福岡県久留米市小頭町6-23
TEL:0942-39-5454
HP:https://www.inouerantai.jp/
Instagram:@inouerantai

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次